当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

日本が絵の輸出国に?

 NHKのテレビで紹介されたので、御存知の方も多いと思いますが、欧米の画商やコレクターが日本で盛んに絵を買っています。ちょっと喜ばしい話ですが、実は買っている作品は日本人が描いたものではありません。彼等が物色しているのは、画廊に飾られた絵ではなく、銀行の倉庫に人目に触れることなく厳重に保管されている欧米の絵なのです。

 バブル期には、絵は土地や株と並んで三種の神器といわれ、銀行は絵を買うのなら無担保で金を貸しました。亡くなった作家の絵は、火事などで減っていくので、土地以上に値上がりする筈だと銀行も考え、最も安全な財テクとして不動産会社や金持ちに絵の購入を奨めたのです。

 それに踊らされた投機家が、印象派やピカソなどの絵をまるでデパートの特売場のように我先にと買いあさり、その総額は1兆円にものぼりました。その買い方はすさまじく、絵そのものはほとんと見ずに、作家の名前だけで一度に数十億円もの買物をしていったと、今でも欧米人の間では軽蔑を込めて語り草になっています。

 バブルがはじけ、それらの絵は担保あるいは代物弁済という形で銀行の手に渡りましたが、不良債権を抱える銀行は絵を換金化する必要に迫られて、現在こっそりとではありますが叩き売りのような形で欧米の画商やコレクターに売りさばいています。ところが作家の名前だけで買いあさった作品なので、あまり出来の良くない作品が多く、購入価格の3分の1の価格でもほとんと売れていないようです。

 ところがルノアールの「ムーラン・ド・ギャレットにて」、ピカソの「軽業師と若い道化師」などの本当の名画は半値以下ではありますが早目に売れて、海外に流出してしまいました。日本の文化資産の視点からは、大変残念なことで、国の文化財に関する関心の薄さを感じます。