当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

悲運の画家たちの展覧会巡り 

 テレビや雑誌等でご存知かも知れませんが、信州上田市の近郊に三つの小さな美術館があります。

 一つ目は「信濃デッサン館」で、村山槐多、関根正二等いずれも若くして亡くなった天才画家のデッサンを中心に展示しています。著述家の窪島誠一郎氏が長年にわたる蒐集作品を公開するために建てた美術館で、現存する作品が極めて少ない「夭折の画家」の貴重な展覧会です。

 二つ目は画家の野見山曉治氏の企画に窪島氏が協力して建てた「無言館」で、第2次大戦で召集され戦死した東京の画学生たちの遺作が展示されています。装飾性を一切排した「無言館」に一歩踏み込むと、私たちの脳裏から消えかけていた戦争の記憶がよみがえり、厳粛な気持ちにさせられます。先輩・同僚たちの出征、そして戦死の悲報が日常化されていく中で、「これが最後の作品になるかも」と必死に制作に取り組んだ画学生の思いが伝わってくるようです。

 三つ目は「北御牧村立梅野記念絵画館」で、蒐集家梅野隆氏が父の代から蒐集してきた明治・大正・昭和にわたる二千点に及ぶ作品をベースに企画・展示しています。梅野氏自身が初代館長で、蒐集の方針等を語ってくれました。

 「芸術性が非常に高い作品を残しながらも有名になることはなく、美術史から忘れられている画家を発掘し、蘇らせることを目的として絵を買ってきた。無名の画家に光を当てる事によって正当な評価に近づけてから、美術館等に販売し、次の蒐集の財源としてきた。」

 自分の眼だけを信じて、危険を覚悟であえて無名作家の作品、サインのない作品まで購入し、しかも自らの力で蒐集品の価値を美術界に証明していく梅野氏にコレクター魂のようなものを感じました。