当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

ベルギー・オランダ美術の旅(4)

 アムステルダムには、古典を中心とする国立美術館、市立近代美術館、それにゴッホ美術館が隣接してあり、内容も充実していてその辺りはアートファンでいつも賑わっています。私どもにとって特に印象深かったのは、ゴッホ美術館です。

 日本人にはゴッホのファンが多いといわれますが、私どももゴッホの絵はこれまで随分見てきました。しかしこれだけまとまって、しかも年代を追って鑑賞できたのは初めてです。ゴッホの遺族が保管していた作品を中心に油彩約200点、素描約550点を所蔵しているといいますから驚きです。現在黒川紀章の設計で隣地に円形の美術館を増設中で、それに資金の一部を提供しているのが、ゴッホの「ひまわり」を購入したことで有名な安田火災です。

 ゴッホが画家の修行を始めた時にはすでに28最になっており、37歳でピストル自殺をするまでの約10年間が、彼の画家としての人生の全てです。その間に彼は約850点の油絵とほぼ同数の素描を残しているので、単純に計算して平均週3点の制作を行っていたことになります。彼は何回も引越しをしたり、入院したりしているのですから、制作時間はさらに限られたものだったでしょう。以下に画業に集中していたかがわかります。

 しかし天才ゴッホの絵だからといって、その出来栄えは一つずつ異なっていると見るべきでしょう。気分の乗った時と乗らなかった時、何かを強く訴えようとした時と習慣で筆をとった時などその時の状況によっても変わるでしょう。私たちは無意識のうちに、作家の有名度合を基準として展示されている全ての作品を同じように鑑賞してしまいがちです。