当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

フランス美術館巡り(1)モロー美術館

 この夏休みを利用して家内とパリ、ニース、リヨン、ルーアンなどフランス各地を巡り、多くの美術館や画家のゆかりの地を訪ねました。これから数回にわたって印象的だった美術館等を御紹介します。
 モロー美術館は、生前ギュスターヴ・モローのアトリエだったところで、パリのモンマルトルの近くにありました。19世紀後半の象徴主義の代表者である彼の作品は、ここ以外ではあまり見ることができないそうです。

 薄暗く、きしむ階段を登って2階・3階にいくと、彼の作品があやしい光を放っていました。19世紀的な古めかしい建物にまさにぴったりの幻想的でかつ官能的な絵は、約半分が宗教画であったにもかかわらず、あまり重々しい感じはしませんでした。

 私達が熱心に見ていたからか、係の人が普段は公開しない大作を描く前に画いた下絵を沢山見せてくれました。展示してある作品を描く前の構想を練るための絵ですが、その多くはまるで抽象画で、説明を受けなければそれがあの具象的な最終作品の下絵とは気がつかなかったでしょう。

 モローには、その抽象画のような下絵の背後にはっきりと具象的な像が浮かんでいたのだと思います。私達にはその下絵がそのまま現代アートとして通用するほど素晴らしい絵に映りました。もしかしたら現代の抽象画は未完成の下絵を完成作品と見なすところに起源があったのかなと思いました。