当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

芸術性と人間性

 東京駅のステーションギャラリーで故小松均氏の個展を観て、久方ぶりに心をゆさぶられる絵に巡り会えた気がしました。日本画なのですが、白い空白を残してきれいにまとめたいわゆる日本画ではなく、パノラマ的な巨大な画面いっぱいに細かいところまでびっしりと描き込まれた迫力のある絵でした。

 京都の大原、最上川、富士山などの山、岩、川、樹、花などを題材にしたものが多いのですが、その自然の存在感が素晴らしく、なにか霊的なものを感じさせます。

 私は小松均という作家のことは全く知らずに時間があったのでぶらりと足を踏み入れたのですが、これはただ者ではないと直感しました。画集と田中日佐夫氏が著した「画人・小松均の生涯」という本を買って読んでみたのですが、作家の生きざまが作品に表れるものなのだなとつくづく思いました。

 小松氏は幼くして父を失い、単身東京へ出て新聞配達をしながら絵の勉強をし、極貧の生活の中でも志を捨てず、全く独自の波乱に満ちた人生を全うした人です。

 あくまでも現場主義で、寺などに泊まりながら雪の山中で何日もスケッチを続け、それによって大地の重さ、大地の広がり、大地の呼吸音を感じとって画面に表していきました。その姿は求道者である修行僧の難行苦行にも似て、まさに限界に挑むすさまじいものでした。

 最低生活を確保するためには「パン画」(パンを得るための売れそうな小品)を描く以外は、死ぬまで自分の絵道の完成に没頭し、院展等で最高の賞をとりながらも、美術界のわずらわしい交わりを避け、孤高の画仙人と評されました。

 テクニックは重要ですが、それに作家の人間性が加わってはじめて、作品の芸術性が決まるのだと思います。