当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

オリジナル・フレーム(額縁)の楽しさ

 平成9年1月10日から29日まで当ギャラリーで個展を開かれる大森運夫先生のアトリエに、展覧会の打合せに行った時のことです。

 額なしの絵は既に見せていただいていたのですが、一枚一枚箱から取り出された絵を見て驚きました。絵によって全て額のデザインが違っており、それによって絵のイメージも大きく変っていました。

 先生に「ずい分個性的な額ですね」と言うと、「そうなんです。私もそれぞれの絵にどんな額ができてくるか楽しみにしているのです。私の絵は、画家と額縁の作者との協力でできているのです。」

 先生は長年宇佐美謙吉さんという額縁の作者にオリジナル・フレームを作ってもらっています。宇佐美さんは御自分も絵を描き、絵のコレクションもされている方で、まずは作品をジッと見つめてから、その作品に一番ふさわしいと思う額縁をデザインするのだそうです。

 宇佐美さんは現在80才、今は少なくなった職人気質の方で、気に入った作家の作品のためにしか、額縁をつくらないのだそうです。お金には無頓着で、放っておけばいつまでも請求は来ないし、何点納品したかも忘れてしまう人なのだそうです。

 大森先生も、今回の展覧会の出展作品については全ておまかせで、自分の作品が額に入って帰ってくるのをわくわくしながら、また多少心配もしながら待っていたのでした。それはきっと、陶芸家が窯から作品を取り出す時の心境に近いのだろうと私は思いました。窯変といって、陶芸家が予期せぬ変化が起って素晴らしい効果を発揮することがあるように、額によって絵の持っている潜在的な力が引出されるということがあるからです。

 先生は、宇佐美さんの額から逆に絵の在り方を勉強させられることが多いといっています。宇佐美さんのような方が減ってきているのは淋しいことです。