当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

バングラデシュへの旅 

 当ギャラリーの企画で1998年に筑摩書房からカジ・ギャスディンさんの画集を出したことが契機であえ、いろいろな事が起こりつつあります。

 まず世界でもっとも充実したアジア美術館である福岡アジア美術館がカジさんの作品を購入してくれました。カジさんは、首都ダッカの郊外にアトリエを持っていて、一度是非遊びにくるようにいわれていたので乾期のうちに伺うことにしました。嬉しいことに行く直前に文京出版から中学の美術の教科書に画集の中の絵を2002年から4年間載せたいという連絡が入りました。

 バングラデシュは、北海道の2倍の国土に1億2千万人が住む世界一人口密度が高い国で、かつ最貧国の一つです。ダッカには東京以上の人工が集中しており、道路にはリキシャ(自転車のタクシー)、三輪のタクシー、バス、トラックが溢れ、埃と排気ガスでたちまち咽喉をやられてしまいそうです。そんな中でも皆眼を輝かせ懸命に生きている姿に、カルチャー・ショックをうけました。

 その喧騒から1歩ダッカ大学の美術学部に入ると、そこは静かな別世界で、カジさんがかつて学びまた教えたことのある教室で、年に1度の学生たちの展覧会が開かれていました。日本人の展覧会に多少食傷気味だったわたしたちには、新鮮でレベルもかなり高いように思えました。

 国立博物館には、ガンジス川のデルタ地帯であるベンガル地方が、4千年も前から世界の先進地域として栄えていた様子が分かり易く展示されています。同時に、近代以降の美術の展示にも力を入れていて、カジさんの絵も飾ってありました。

 車で2時間ほどのドライブでガンジス川を見に行きましたが、その巨大さに圧倒されると同時に、途中延々と続く田園風景にカジさんの昔のスケッチを思い出しました。

 今回の滞在を通じて、深刻な経済・社会状況にもかかわらず、誇り高いベンガル魂はなお行き続けているのだと感じました。