当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

シーギリア・レディの誘惑

 今年のお正月休みを使って、セイロン茶とサファイヤやルビーなどの宝石で有名なスリランカに行ってきました。お正月明けに当ギャラリーで個展をされた大森先生が、「スリランカには素晴らしい美女の壁画があるので、自分も行ってみたい」とおっしゃっておられたので、それを見るのが今回の旅行の一つの目的でした。

 首都コロンボに着いてみると、その雑踏、ほこりと排気ガス、路上のごみに群がるカラスと野犬に圧倒され、これはえらい所へ来てしまったと思いました。ここは早々に抜け出そうと、タクシーを雇いシーギリアに向いました。6時間ほど行くと真平らな何もないジャングルの中に、オーストラリアのエアーズ・ロックを小ぶりにしたような巨大な岩山が忽然と姿を現しました。

 その岩山を息を切らせながら登って行くと、中腹にオーバーハングになっている部分があって、そこの僅かな空間に1500年前に描かれた18人の美女の壁画がありました。雨が当らない所なので保存状況は非常に良く、そのなまめかしい魅惑的な表情、姿はまさに息を飲むほどでした。

 腹違いの弟を追放し、父親を殺害して王位をついだ若い王様は、岩山の頂上に城を築き、寂しさをまぎらわすためか、岩肌に500人もの美女を描かせたといわれます。11年後にインドから軍勢を率いて攻め込んできた弟に追いつめられた王は首を切って自害したそうです。その後岩山は僧の修行の場となり、心を惑わす美女達は消されてしまいましたが、縄ばしごがこわれて登れなかった部分にあった18人の美女だけが生きのびたわけです。