当サロンオーナー、田中義明によるエッセイ

イギリス美術館の旅(2) 

 ロンドンで最も完璧な美術館(空間的に)と言う評判のヘイワード・ギャラリー(向こうでは美術館もギャラリーと言っている)に行ってみました。私どもはそそっかしくもパンフレットも読まずに最初の展示室に入ったら、2百号位の顔写真が何枚も飾られていたので、とっさにこれは写真展なんだと思いました。次の部屋へと移っていくと、粒子がかなり粗くなり、さらに進むと形はディフォルメしてないのですが、点描画のような感じになってきて、これらはすべて手で描いたものだということがやっと分かりました。

 顔写真を精確に拡大し、それをいろいろな粒子の描き方で絵に仕上げたもので、中にはインパクトのあるものもありましたが、基本的には着想のオリジナリティが評価されたのだと思いました。ちなみにこの作家はチャック・クローズという人で、この展覧会はニューヨークの近代美術館の企画でした。

 ロンドンで私どもが一番感動したのは、テイト・ギャラリーでした。ターナー、コンスタブル、ミレイ等イギリスの作家を中心に16世紀から現代までをカバーしていますが、わけてもターナーは油彩約3百点、水彩約2万点がここに収蔵されているといわれます。私どもが行った時に、フランスのセーヌ川流域のスケッチ百点余りが特別展示されており、油彩ばかりでなく水彩にも素晴らしい作品が沢山あることを知りました。

 ターナーは私どもの最も好きな作家の一人なので、幾部屋にもわたるターナー・コレクションを行ったり来たりして十分に堪能しました。海・空・陸を背景に光・風・空気を描いたのではないかと思えるターナーの幻想的な絵は、理屈抜きで私どもの心をかき立てまた癒してくれました。

 今年の5月に、旧火力発電所を改装して20世紀美術の全容を示す「テイト・モダン」がオープンしましたが、私どもがロンドンに行ったときには残念ながらまだ工事中でした